ピンチをチャンスに変える 長期休養明けの復調トレーニング

今回のポイント

・休養期間と4つの体力因子の関係

・各体力要素を評価する方法を明確にしておく


今年は新型コロナウィルスの影響でプール自体が使用できなくなった期間もあり、パフォーマンスの低下に不安を抱いた人も多かったのではないでしょうか?

しかし実際に蓋を開けてみれば、パーソナルレッスンに参加していただいている多くの方が(小学生から60代の方まで)ベストタイムを更新していました。特に興味深かった事例として、5mストリームラインダッシュにおいては、90%の人が1ヶ月長期休養明け直後のほうが速くなっていました。

推測の域ではありますが、水泳選手の多くは足首の柔軟性が高く腱の剛性が低い傾向にあり、スタートなどの瞬発的な動作において、マイナスに働きやすいと思われます。休養時に陸上のトレーニングが増加したことなどから、足関節の剛性が高まりスタート動作のパフォーマンスが向上したと考えられます。

このように長期休養によってプラスとマイナスにそれぞれ働く因子があり、それらを整理しておくことは今後のトレーニングや練習を効率よくすすめる上で重要です。今回は2つのポイントに分けてご紹介します。


◯休養の期間と体力因子の関係

トレーニングを休止してからパフォーマンスが低下していくことをディトレーニングと言いますが、今回は4つの体力因子との関係をみていきます。

1〜2週間:水を捉える感覚や神経伝達速度などの神経系の低下。テンポが上がらない。

2〜3週間:最大筋力の低下。ストローク数が増える、バタフライがしんどい。

3〜4週間:筋持久力の低下。50m以上のメニューがしんどい。

4週間以降:有酸素性持久力の低下。サイクルを長くしないとしんどい。

通常1ヶ月休養したら1ヶ月かけてトレーニングの負荷(強度×量)を戻していきます。また、各体力因子を向上させるためには、それぞれ異なるメニューを行います(特異性の原則)。逆を言えば、一つのトレーニングメニューで体力因子すべてを向上させることはできません。ちなみに、パワーを中心とする無酸素能力と、持久力を中心とする有酸素能力は相反する能力ですから分けてトレーニングしなければなりません(50mレースでは無酸素:有酸素=9:1と言われます)。さらにトレーニングメニューと測定評価メニューも分けて考える必要があります(これは次回以降にまた別の記事で紹介します)。


◯各体力要素を評価する方法を明確にする

神経系を評価する場合は、スプリントチェックにおける最大テンポの測定やスタート動作におけるリアクションタイムをみます。最大筋力の評価は、5mストリームラインダッシュやカウントストロークで最小ストローク数をみます。筋持久力と有酸素性持久力の評価は、20秒20秒チャレンジでテンポとタイムの推移をみます。このように各体力因子を評価する方法を決めておけば安心です。現状を正しく把握することが復調のスタートであり、余計な精神的負担を減らしてくれます。

レッスン内では、ウォーミングアップの時点で、ハイポやテンポやストローク数やタイムの管理能力もチェックしています。不安や焦りがあるときは呼吸に影響が出やすいので、ハイポのコントロールを重視するようにしています。クロールであれば、疲労の蓄積が少ないテンポ1:00で15秒程度のノーブレス繰り返すだけで復調することは多いです。姿勢維持のために体幹のインナーユニットは重要な役割を担いますが、横隔膜はユニットの一部であり、ノーブレスによって横隔膜に安定して力を入れることを覚えさせるのが理由です。バタ足は横隔膜への影響を与えやすいので必要であればキックを打たないプルで調整します。

テンポを管理するにはテンポトレーナーを使用するのも良いですね。レースにおけるクロールの場合は、50mレースが0:50、100mレースが0:60、200mレースが0:70が目安です。50mバタフライなら0:90~1:00。



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