新・水の怪物 ドレッセル選手のスタートトレーニングについて 

2020年12月中旬に、HNK BS にて「新・水の怪物 速さを解剖」にてアメリカのケイレブ・ドレセル選手の特集がありました。なかでもスタート動作のトレーニングについて興味深かったので解説します。

陸上トレーニングにおいて次の3ステップを用いていました。
①高重量×低速のスクワット
②低重量×高速の連続的なジャンプスクワット
③自体重のみ×超高速の連続的なジャンプスクワット

高重量→最大パワー→実際の動作スピード の順に行っています。この順序は重要で、入れ替えてはいけません。①では高重量に耐えれるだけのフォームを習得しておきましょう。ヒップヒンジのスキルは必須です。②や③の連続的なジャンプスクワットは膝への負荷が高いので、これに耐えれるだけの段階的な別のプライオメトリクストレーニングも下準備として必要です。この辺は安易に真似して導入するとリスクがあるので専門家の指導のもと行いましょう。ドレセル選手は1回のセッション内に3ステップをサーキットのように短いインターバルで取り入れていましたが、本来は①だけで3ヶ月ぐらいじっくり土台作りをしても良いですね。

また、レースに向けて①②③の割合をどのように調整するかも重要です。特にレース直前に①を多く導入してしまうと、スクワットそのものの挙上重量は向上するのですが、低速での運動習慣がついてしまい、実際のスタートのリアクションタイムが遅れる場合もあります。これはスイム局面においても同様で、高重量のウェイトトレーニング自体はトレーニングプログラムの必要な要素の一つですが、導入時期と量を間違えると一時的にパフォーマンスの低下をまねきます。

さらに先天的な要素として腱の強さ(剛性)も関わってきます。研究では腱の剛性もウェイトトレーニングによって向上するという報告もありますが、継続的に長い時間を要します。関節の可動域が比較的大きい水泳選手は、腱や靭帯の剛性が低い場合が多く、特に時間を要するでしょう。背泳ぎの入江陵介選手はウェイトトレーニングで体つきも変わり、スタート局面のスピードアップに成功していますね。

11~12月のFLOW STYLEのイベントレッスン(スタート練習会)では、壁にお尻を押し付けて腕を胸の前でクロスしお辞儀した姿勢から一気に立ち上がるトレーニングを行いました。体幹の姿勢が安定し、膝よりも股関節の伸展を優位にし、膝へのストレスを軽減していますので、ジュニア選手でも導入しやすかったと思います。さらにジャンプトレーニングでは、アンクルホップという足首だけを動かすエクササイズ(縄跳びと同じ)を実施しました。これはプライオメトリクストレーニングの導入という位置づけです。その後のリアクションタイムや5m通過タイムは0.1~0.2秒速くなっている傾向です。

トップ選手の泳ぎ方やトレーニングを参考にする際には、自身の体力やスキルの現状把握と照らし合わせ、計画的に導入していきましょう。イベントレッスンではできるだけリスクを抑えて誰にでも導入しやすいレベルのエクササイズを提供しています。より高いパフォーマンスを目指す方はパーソナルレッスンをご利用ください。

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